2009年01月15日

カイピアイネンとパンジーのお花


どこかの媒体では「フィンランド陶芸界のプリンス」とまで呼ばれているビルガー・カイピアイネンですが、その彼が特にこだわりを持っていたアイテムがいくつかあります。その中の一つに、きっとほとんどの皆さんが彼の代表作としてご存知かと思います「パラティッシ」シリーズに登場している「パンジー」のお花があります。

現行のパラティッシシリーズには残念ながら見ることができませんが、1950-1960年代に制作されていたオリジナルのパラティッシ(オールドパラティッシ)の底面にはしっかりと美しい「パンジー」のお花に囲まれたバックスタンプが残っていることもとても有名なお話です。

実はARABIAの長い歴史の中で、このパンジーを作品の中に唯一描くことができたのがカイピアイネン。つまり他のデザイナーはこのパンジーのお花を作品の中に描くことが許されていなかったという訳なのです。そんなわけで皆さん、機会があればこのちょっとしたカイピアイネンにまつわるお話をパラティッシを片手に是非お友達に教えてあげてみてください。
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2008年03月21日

Kaj FranckとTEEMAの誕生

Kaj FranckとTEEMAの誕生
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昨日のブログでは今月の26日より4日間限定で販売が予定されているTEEMAブラックのスクエアプレートについて告知をさせていただきましたが、今回のブログではせっかくの機会ですので、いまや北欧のテーブルウェアデザインを象徴するまでになった、このTEEMAシリーズが誕生するきっかけなどについてご紹介してみたいと思います。(※以下、少し長くなりますので興味のある方だけお読み下さい。)

北欧のテーブルウェア、特にフィンランドのARABIA社の作品について少しでも知っている人ならきっとこのTEEMAシリーズをデザインしたのがkaj Franck(カイ・フランク)というフィンランド出身のデザイナーであることをご承知かと思います。そしてもう少し詳しい知識のある方なら実はこの現行のTEEMAシリーズの以前に、KILTAシリーズという今のTEEMAの原型となったシリーズがあったことをご存知ではないでしょうか。

ではこのTEEMAシリーズの原型となったKILTAシリーズが誕生するきっかけはどのようなものだったのでしょうか?そこには、それまで慣習的に利用されてきた既存のテーブルウェアに対するKaj Franckの真っ向からの対立がそもそものはじまりとなっています。

KILTAシリーズが最初に発表されたのが1952年のこと。それまで一般的に使用されてきた食器類は全ての食器に対して、その用途が厳格に定義されたものばかりでした。例えば日本の伝統的な食器を例に考えてみても同じことなのですが、例えばお味噌汁にはお味噌汁専用の御椀があって、お漬物にはお漬物用のお皿、そしてご飯には専用のお茶碗がありますよね。つまりkaj FranckがKILTAシリーズを発表することでまず最初に成し遂げたかったのは、そのように伝統的に用途を限定して使われてきた「食器セット」という概念を打ち壊したかったというのがそもそもの理由でした。

その目的を達成するために、Kaj Franckはまず一つ一つの食器から無駄な装飾を一切排除した、極力シンプルなデザインをした食器の制作を試みます。そのようにデザインに無駄のないシンプルな食器類は、小さなスペースへの収納が効率的に行えるだけでなく、あらゆる種類の料理や用途に応じて個別に使いまわすことができるようになり、現代の生活により適したまさに「機能的な」作品となったわけです。

ですがこのようなKaj Franckの前衛的な考え方は、1950年代当時にはそう簡単に受け入れられるものではなく、KILTAシリーズを商品化する際には、ARABIA社の執行部と大変な衝突があったというのも有名な話です。ですがそれらの執行部の反対を押し切り見事量産化へ向け生産されたKILTAシリーズは、結果的にフィンランド国内だけでなく他の諸外国でも大変な成功を収める人気シリーズへと成長していきます。

その後約四半世紀にわたってロングセラーを続けるKILTAシリーズでしたが、スウェーデンのRORSTRAND社と業務提携を開始したARABIA社は、1975年に突如KILTAシリーズの生産停止を発表します。実はこの決定に大きな影響を及ぼしていたのが新たにARABIA社の執行部に加わったスウェーデンからの幹部達でした。実際にはKILTAシリーズは当時も非常に安価で世界中で人気のある作品だったのですが、将来的な売り上げが期待できないという理由からこの生産停止が発表されたのです。

この一方的な発表が、フィンランド国内で大きな怒りを招くこととなります。そしてそれに応える形でkaj Franckは、このスウェーデン執行部からの要求を拒絶した上、従来のKILTAシリーズをさらに発展させ、より近代化したTEEMAシリーズの制作を開始することになります。

では実際にKILTAシリーズと新しいTEEMAシリーズはどのような点が異なっているのでしょうか。まず一番大きな違いは、従来のKILTAシリーズが土器を用いた陶器質の作品であるのに対して、TEEMAシリーズではより耐久性に優れた石器が用いられています。ですので例えばKILTAのホワイトプレートがより純白に近いホワイトであるのに対して、現行のTEEMAプレートは少しクリーム色がかかったホワイトが使用されています。また実際はほとんど気づかない程度ですが、生産効率をさらに高めるため、わずかなモデルチェンジもなされているようです。

つまり現在ではこうして日常的に生産され続けているTEEMAシリーズですが、その歴史をたどってみるといかにその制作過程における発想が前衛的なものであったか、またKaj Franckという人物がそれまであった固定概念や既得権益に屈することのない強い信念を持ったデザイナーであったことを垣間見ることができます。

最後にKaj Franckという人物を理解する上でとても象徴的な逸話を一つ。これはkaj Franckが自ら教壇に立ち、若い学生に対する指導を行っていたときの話。Kaj Franckはコースの受講者である全ての学生に対して、学生達自らが最も気に入っている色3つを用紙に書かせて提出させたそうです。次にその学生達に課した課題が、「何か美しい絵を描きなさい、ただしさっき提出した自分が好きな3色は決して使わないこと」というもの。

その結果、これまであまり使用する機会のなかった色を用いてデッサンをはじめた学生たちは、それまで決して描くことができなかったとても美しい絵を描くことができたそうです。きっとkaj Franckという人はそのような自らが持つ固定観念を捨て去ることで、新たな可能性を常に模索し続けて制作活動に挑戦してきたデザイナーだったのではないかと思います。
【ページ上部 Kaj Franckイラスト・本文参考資料】

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2008年03月19日

Anja Jaatinen-Winqvist

ARABIA社SAARAとKAIRA
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『SAARAとKAIRA』、まるで仲良し姉妹のような名前が付けられたこの2つのティーカップたち。でもちょっと見てみると、なんだか質感や色合いなどが似ている気がしませんか?そうなのです、この2つの作品は実は同一人物によってデザインされた作品だったのですね。

この2つのシリーズのデコレーションデザインを担当したのがAnja Jaatinen-Winqvist。1950年代からARABIA社のプロダクトデザイナーとして主にハンドメイドのアトリエ作品を制作した後に、1991年までフィンランドのPENTIK社でも活躍したフィンランド出身の女性デザイナーです。彼女が制作した代表作の中には写真のSAARAやKAIRAシリーズをはじめ、ベリー柄がとてもかわいらしいTAIKAシリーズ、そしてちょっとめずらしいこんな作品も制作しています。

彼女が制作してきたこれら全ての作品に共通していることが、なんといってもセラミックウェア(陶器)が放つ独特の美しい色合いや、あたたかな質感を作品の中にとてもうまく表現している点だと思います。このように自然の中にある美しいものを、人々が毎日の生活の中で利用できる家具や食器などにうまく応用していくことはドイツやスウェーデン出身のデザイナーとは対照的に、フィンランド出身のデザイナーが非常に優れているとされる点です。

特にAnja Jaatinen-Winqvistが制作してきた作品はどれもとてもシンプルなデザインながら、作品の全てから彼女独特のオリジナリティ(独創性)を感じられる作品ばかりです。このように陶器の素材である「土」をとても大事に扱ってきた彼女の作品は、きっと皆さんの生活にも優しいひと時を与えてくれるのではないでしょうか。Anja Jaatinen-Winqvist、フィンランドが生んだ素晴らしい女性デザイナーの1人です。

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